冨士フイルムは、 X シリーズ初の『ボディ内手ブレ補正機構』を搭載した X-H1 を発表。発売は〈2018年3月1日〉で販売価格は24万円前後(税別)。
従来のラインナップでは、FUJIFILM X-T2 がシリーズのフラグシップ的な存在でしたが、X-H1 の登場によって、その座を譲ります。今後は、X-T2 は高性能・小形軽量の一眼レフスタイルのカメラ。X-H1 は重量級レンズの取り回しや、動画撮影に適した最上級カメラとして方向性ができています。
X-H1 は、ボディ形状が X-T2 と似ていますが、ボディサイズは〈139.8 × 97.3 × 85.5 mm〉と X-T2 と比べると、幅 7.2mm、高さ 5.5mm、奥行き 36.3mm と一回り大きい。ボディとあわせてグリップ部分も大きくなり、より構えやすくなっています。さらに、ボディ筐体のサイズアップにともない重量は〈約673 g〉。X-T2 と比べて〈約166 g〉重い。
新設計のボディ筐体上面には、中判ミラーレスカメラ FUJIFILM GFX 50S と同じく表示パネルを装備。設定・使用状況の確認がよりスピーディになった。
- ▼X-H1仕様情報
- おもな特徴
- 機能・性能
- フジノン シネマレンズ
- X-H1 製品画像
- 販売価格
- FUJIFILM X-H1スペック
- X-H1 レビュー・試写
X-H1 特徴
- ローパスフィルターレス・イメージセンサー
- APS-C 2,430万画素 X-Trans CMOS III
- 高速画像エンジン X-Processor Pro
- 測距点は91点(最大325点)高精度オートフォーカス
- 高剛性・高耐久のマグネシウム合金ボディ
- 最大5.5段の5軸ボディ内手ブレ補正機構
- シャッター衝撃吸収構造
- チャンスを逃さないフェザータッチシャッターボタン
- ファインダー倍率0.75倍、369万ドット電子ビューファインダー
- 全16種(新採用:ETERNA)のフィルムシミュレーションモード
- DCI 4K 動画記録(デジタルシネマ 17: 9 対応、200 Mbp ビットレート)
- 広いダイナミックレンジのガンマカーブ F-Log(エフログ)での記録可能
- 120p/100pのハイスピード動画撮影対応
- 動画サイレント操作機能
- FUJINONシネマレンズ MKX で撮影可能
- スマートフォン・タブレットでリモート操作可能
- 動画撮影時のフリッカー低減機能搭載
- パワーブースターグリップVPB-XH1(別売)で秒間連写 約11枚
- パワーブースターグリップVPB-XH1(別売)で撮影枚数が最大約900枚
機能解説
ボディ内手ブレ補正機構
X-H1 に採用された『ボディ内手ブレ補正機構』は、3軸加速度センサー、3軸ジャイロセンサー、専用デュアルプロセッサーにより、5軸手ブレ補正を実現。
新開発の手ブレ補正の効果はかなり高く、フジノンレンズ[XF35mmF1.4 R]で撮影したばあい 5.5 段分相当の補正能力を発揮するそうです。
ボディ内手ブレ補正機構は、イメージセンサー部分が動いてブレを補正するため、精度が高くないと画質低下の原因にもなります。冨士フイルムでは、平滑性〈± 0.05 ミクロン〉以内という鏡面加工ステンレスに、直径〈± 0.3 %〉以内のセラミックボールなどという厳格な基準によって手ブレ補正機構は製造。また、手ぶれ補正機能が作動していても安定した撮影を可能にしています。
冨士フイルムのフジノンレンズには、レンズ内部に手ブレ補正機能を搭載したラインナップもあります。その場合の作動条件は、レンズ側の手ブレ補正を優先させ、足りない補正分をボディ側でおこなう設定。レンズとボディで同時に補正はしません。
センサー・画像エンジン
X-H1 に搭載されるイメージセンサーは、APS-C サイズの有効2,430万画素[X-Trans CMOS III]、画像処理エンジンは[X-Processor Pro]と、画素数や画像処理エンジンは X-T2、X-Pro2と同じ。常用感度はISO200~12800。拡張時はISO100~51200。
AF
AF(オートフォーカス)は画面中央の横50%、縦75%で像面位相差AFを利用できるため高速・高精度を発揮。測距点は91点(最大325点)あり、動く被写体への追従性が強化されています。また、ズーミング中の AF-C 性能も強化され、スポーツ撮影から野鳥などの微細なテクスチャも捕らえられるよう捕捉性能を向上。
基本フォーカスシステムは X-Pro2 や X-T2 と同等ですが、最新のAFアルゴリズムを採用することで、像面位相差 AF の低照度限界は従来の〈0.5 EV〉から〈-1 EV〉へと約 1.5 段分拡張できたことで、最小絞りの範囲は〈F8〉から〈F11〉にへ拡大。これによってテレコンバーター装着で F値 が F8 より暗くなっても像面位相差による AF が可能になりました。
X-H1 では動的な被写体撮影に最適化しているため、親指操作でフォーカスできる『AF-ON』ボタンと、フォーカスポイントを素早く移動できる『フォーカスレバー』を備える。
シャッターボタン
シャッターボタンには、シャッター操作のブレを抑えた『リーフスプリング式スイッチ』を採用することでシャッターチャンスをモノにできる仕様にしています。なお、プロユーザー向けには、シャッターストロークを調整する有料サービスも提供。このあたりは X-H1 がプロユースに向けて開発されていることが分かります。
ファインダー・モニター
EVF(電子ビューファインダー)の大きさは 0.5 型。解像度は約 369 万ドットと、X-T2 の約 236 万ドットから解像度が大きく向上。倍率は 0.75 倍でフレームレートは 100 fps。表示タイムラグは 0.005 秒と性能は熟成している。
さらに、ファインダーの光漏れを防止するワイドアイカップ[EC-XH W]の装着も可能。アイカップは厳格な動画撮影には必須のアイテム。
液晶モニターは、約 104 万ドットの 3 型タッチパネル式。3軸のチルトが可能で、写真・動画ともアクティブな撮影を可能としています。
動画撮影
X-H1 は動画撮影に力を入れたミラーレスカメラ型のムービーカメラ。
動画記録は 4K(29.97 pなど)のほか、DCI 4K(4096 × 2160 / 24 pなど)での記録にも対応するほか〈200 Mbps〉の高ビットレート記録もサポート。また、ハイダイナミックレンジガンマカーブ「F-Log」のSDカードへの記録も可能。さらに、Full Hi-Vision のハイスピード動画収録(120p / 100p)にも対応し高画質なスローモーション動画の撮影もできます。
写真撮影でも好評の『フィルムシミュレーション』は動画撮影にも対応。同社の映画用フィルムをシミュレートした『ETERNA(エテルナ)』を初搭載。
ETERNA では映画用フィルムの色と階調を再現し、落ち着いた発色と豊かなシャドウトーンが特徴。さらに明暗差の許容範囲を拡げる『ダイナミックレンジ 400%(約12段相当)』と併用することにより、シネマ撮影のイメージを再現する高画質映像の収録が可能。このフィルムシミュレーションモードは、動画だけでなく写真にも適用可能。
さらに冨士フイルムでは、動画向け市場にむけてコストパフォーマンスの高いシネマレンズを展開するため、X マウントのシネマレンズ2本を〈2018年6月〉に発売。ラインナップは標準ズームレンズ[MKX18-55mmT2.9(税別希望小売価格は54万9,500円)]と、望遠ズームレンズ[MKX50-135mmT2.9(同59万9,500円]。
詳しくは〔X-H1:シネマレンズ対応〕にて情報掲載しています。
ボディ剛性・防塵防滴
プロユースを前提に開発されたボディは強度・耐衝撃にすぐれた素材と構造のフレームと筐体をもつ。
ボディ素材にはマグネシウム合金を採用。マグネシウム合金は厚みを25%増やし、さらにレンズマウント部分の構造も強化。重量級レンズへの装着対応と衝撃などに強い筐体に仕上げています。
たとえば、2018年秋のリリースを予定している大口径望遠レンズ[XF200mm F2]などの装着を考慮。マウント周辺にかかる負担に対応するため、マウントやボディ前面には内部に1mmのリブを設けたり、ボディのマグネシウム合金を厚くして従来比で2倍の強度を持たせています。
さらに、野外状況やあらゆる天候に対応するための防塵、防滴、-10度の耐低温性能仕様と、ハードユースに対応するため、表面硬度〈8H〉相当の擦り傷に耐える耐性塗装を採用しています。
縦位置グリップ
別売の縦位置グリップ[VPB-XH1]は、動画撮影や撮影枚数が多いヘビーユーザー必須のアクセサリーアイテム。バッテリーグリップも本体同様の防塵防滴、耐寒性能を有する。
グリップ内部にはバッテリーを2個搭載可能。カメラ本体のバッテリーと合わせて使用することで最大約900枚(ノーマルモード)の撮影でき、4K 動画の記録時間を約15分から約30分に延長できます。
VPB-XH1 はパワーブースター的な役割も果たすため、メカシャッター11コマ/秒(非装着:8コマ/秒)と連写性能を上げることが可能になります。さらに、撮影間隔、シャッタータイムラグ、ブラックアウト時間が短縮するブーストモードも搭載。
X-H1:シネマレンズ対応
X-H1 は、Xシリーズのラインナップで初めて動画撮影に重点をおいた APS-C イメージセンサーを採用するモデルです。その高画質な動画撮影記録を可能にするフジノン MK レンズとの組合せ画像が海外で上がっています。
X-H1 で動画撮影するばあい、Xシリーズカメラに対応する『Xマウントレンズ』でも気軽に撮影することは十分可能なのですが、イメージどおりの映像美・高画質を追求するハイアマチュアやプロユーザーには、より動画撮影に最適化された操作性に、あらゆる画角でも高画質な映像をイメージセンサーに届けるレンズ群が必要になります。
圧倒的な画質を追求するレンズは大きくて重いのものです。そのような重量級レンズに対応するために X-H1 には大きくて深いグリップが用意されています。写真撮影レンズであれば、今後発売される『Fujinon XF 200mm F2 R LM OIS WR』の取り回しも十分考慮されています。
冨士フイルムの高画質な動画撮影レンズには『Fujinon MKレンズ』がラインナップされています。このレンズは、Xマウントカメラに装着することが可能であるため 動画記録性能がアップしている X-H1 との相性は抜群に良いでしょう。冨士フイルム開発者もこの組合せを考慮して X-H1 を開発したのは間違いありません。
Fujinon MKレンズ
Fujinon MK レンズは、高画質な動画撮影用に開発されたシネマカメラ用レンズ。高い光学性能と圧倒的な小型軽量化、優れたコストパフォーマンスによって、より多くのシネマカメラユーザーが思い描く映像を高画質で記録することができます。
動画専用レンズに最適化された光学・機械設計を行うことで、デジタルカメラ用交換レンズの持つ、「ズーミング時の焦点移動や光軸ずれ」、「フォーカシング時の画角変更(ブリージング)」を抑制。さらに、フォーカス、ズーム、アイリス(絞り)を独立してマニュアル操作できる3連リングを搭載し、全ての操作リングのギアピッチを0.8M(モジュール)に統一。フォーカスリングの回転角を幅広い200度に設計し、精緻なフォーカスを可能にするなど、映像制作現場のニーズにこたえる快適な操作性を実現しています。
このシネマカメラレンズが装着できるマウントは、スーパー35mm(*1)/APS-Cセンサー対応のEマウント(*2)と、冨士フイルムデジタルカメラ「Xシリーズ」(APS-Cセンサー対応)で採用しているXマウントの2種のマウントに対応しています。
現在発売している Fujinon MK レンズは2本。
- FUJINON MK18-55mm T2.9
- ¥420,000(重量:Eマウント専用・本体重量約980 g)
- FUJINON MK50-135mm T2.9
- ¥450,000(重量:Eマウント専用・本体重量約980 g)
絞り値の『T値』とは、F値と透過率を考慮して表したレンズの明るさを示す指標。数値が小さいほど明るいレンズであることを表しています。
- *1:映画用の35mmフィルムカメラにおいて標準的なフォーマットで、多くのシネマカメラで採用されているセンサーサイズ。
- *2:ソニー株式会社が開発したレンズマウント規格。
プロユースでの動画撮影には優れたレンズが不可欠になりますが、もちろん高性能なカメラボディも必要になります。動画撮影に重点をおいた X-H1 と MK レンズの組合せには要注目です。
X-H1 製品画像
販売価格
X-H1 スペック
型番 | FUJIFILM X-H1 | |
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有効画素数 | 2430万画素 | |
撮像素子 | 23.5mm×15.6mm(APS-Cサイズ) X-Trans™ CMOS IIIセンサー 原色フィルター採用 | |
センサークリーニング | 圧電素子による超音波方式 | |
記録メディア | SDメモリーカード/SDHCメモリーカード/SDXCメモリーカード(UHS-Ⅰ/UHS-II対応)(*6) | |
レンズマウント | FUJIFILM Xマウント | |
手ブレ補正 | 補正機構 | センサーシフト方式5軸補正 |
補正段数 | 5.5段(CIPA規格準拠、ピッチ/ヨー方向、XF35mmF1.4R装着時) | |
撮影感度 | 感度設定 | AUTO1、AUTO2、AUTO3(ISO12800まで設定可能) ISO200~12800(1/3ステップ)(標準出力感度) |
拡張感度 | ISO100/125/160/25600/51200 | |
ファインダー | 電子ビューファインダー 0.5型 カラー液晶ファインダー 約369万ドット(視野率: 約100%) アイポイント:約23mm(接眼レンズ最後尾から) 視度調整範囲:-4m-1~+2m-1 ファインダー倍率: 0.75倍 水平視野 約30°(対角視野 約38°) アイセンサー付き |
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液晶モニター | 3.0型 3:2アスペクト 3方向チルト/タッチパネル式TFTカラー液晶モニター 約104万ドット(視野率約100%) |
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連写 | 14コマ/秒(電子シャッター設定時)、8コマ/秒(メカニカルシャッター設定時) 11コマ/秒(メカニカルシャッター設定時、VPB-XH1装着時) |
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動画 | 4K 4096×2160 24P/23.98P 連続最大 約15分まで 4K 3840×2160 29.97P/25P/24P/23.98P 連続最大 約15分まで Full HD 1920×1080 59.94P/50P/29.97P/25P/24P/23.98P 連続最大 約20分まで HD 1280×720 59.94P/50P/29.97P/25P/24P/23.98P 連続最大 約30分まで ※UHSスピードクラス3以上のメモリーカードをご使用ください。 ※パワー・ブースター・グリップ装着時は4K動画、 Full HD動画共に約30分まで連続撮影可能。 |
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ワイヤレス転送部 | 準拠規格: IEEE802.11b/g/n(無線LAN標準プロトコル) 暗号化方式: WEP/WPA/WPA2 mixed mode アクセス方式: インフラストラクチャーモード |
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Bluetooth® | 準拠規格: Bluetooth Ver. 4.0(Bluetooth® low energy) 使用周波数範囲: 2402~2480MHz(中心周波数) |
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電源 | 充電式バッテリーNP-W126S(リチウムイオンタイプ)(付属) | |
寸法・質量 | (幅)139.8mm×(高さ)97.3mm×(奥行き)85.5mm(奥行き最薄部39.5mm) 約673g(付属バッテリー、メモリーカード含む) 約623g(バッテリー、メモリーカード含まず) |
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標準撮影枚数(*7) | 約310枚(XF35mmF1.4R使用時、ノーマルモード時) | |
付属品 | クリップオンフラッシュEF-X8、充電式バッテリーNP-W126S(リチウムイオンタイプ)、バッテリーチャージャーBC-W126、ショルダーストラップ、ボディキャップ、ストラップリング、ストラップリングカバー、ストラップリング取り付け補助具、ホットシューカバー、シンクロターミナルカバー、ケーブルプロテクター、使用説明書、保証書一式 |